皆さん、こんにちは。 無料の美術館・博物館が盛りだくさんのロンドン!
お気に入りの場所に何度も通うのにはまっている、ロンドン在住のAyaです。
先日、訪れたナショナル・ギャラリーで初めて「カラヴァッジョ」の絵に初めて出会いました。
恥ずかしながら、それまで名前すら知らなかった私。

右:『洗礼者ヨハネの首を受け取るサロメ』
真っ黒な背景にスポットライトを浴びたように描かれた人々。
そして、物語の一瞬を切り取ったような、人間味溢れる表情や動き。
まるで劇の一場面を見ているような錯覚に陥りました。
印象派大好き、印象派ばかり見てきた私にとって、カラヴァッジョの絵のリアリティ感は衝撃的でした!
ご存じの通りカラヴァッジョは、大阪万博のイタリア館で目玉の一つとなった《キリストの埋葬》を描いた画家。

モネやダ・ヴィンチに比べると、一般的にはそこまで名前が浸透していないかもしれませんが、
絵画の歴史に与えた衝撃は、他のどの画家以上と言っても過言ではありません。
そんなカラヴァッジョの衝撃作、
キューピッドを描いた《勝ち誇る愛(Amor Vincit Omnia)》が、現在期間限定でロンドンで見られるんです!
(行くしかない!!ということで行ってきました!)
通常はベルリンのゲマルデガレリー(Gemäldegalerie)に所蔵されているこの名画が、
なんとウォレス・コレクションで無料公開されています。
このキューピッドの絵は、「キューピッド?」なの?と疑いたくなるようなスキャンダル性を持っている絵。
今回の記事では、この絵をより深く楽しむために
・≪勝ち誇る愛≫とは、どんな絵なのか?キューピッドの本当の意味とは?
・なぜ「スキャンダラス」と言われたのか?
・カラヴァッジョはどんな人だったのか?
という点にポイントを絞り、お伝えしたいと思います。
是非、お出かけの参考にしてみてくださいね。


カラヴァッジョのキューピッド《勝ち誇る愛(Amor Vincit Omnia)》
こちらがその絵!皆さんはどんな印象を受けますか?

私は最初、はにかんでいる少年に見えました。でも、見れば見るほど「違和感」を感じます。
あどけない顔とは対照的でキューピッドとは思えない筋肉質な身体。
キューピッドと聞いて思い浮かべるのは、お腹がぽっこりと出た欲張りボディ(笑)

違和感を感じ始めると、はにかんでいたように見えた少年の顔は、
次第に「不敵で、ひきつり、どこか悲しげな」表情にも見えてきます。
こちらに何か訴えかけているような少年に、思わず目をそらしたくなるような…。
不思議な感覚。最後には、少し「怖い」とすら感じて私は展示室を後にしました。
この絵に感じた違和感は一体何なのか?
この作品、そして画家のカラヴァッジョについて、深堀していきたいと思います。
≪勝ち誇る愛≫とは、どんな絵なのか?
この絵でキューピッド(アモール)が踏みつけているものに注目してください。

写真だと少し見えにくいのですが、足元には
- 武器(戦争・武力)
- 王冠(権力)
- 楽器(芸術)
- 書物(知性・学問)
これは、「愛は、芸術・戦争・権力・知性、そのすべてを凌駕する」という意味です。
キューピッド(アモール)は「愛」を象徴する存在。
ローマ神話の愛の神で、矢によって人を恋に落とします。
ここでいう「愛」とは、ロマンチックな純愛だけではありません。
人間の理性を超える「衝動」や「肉体的な欲望」。
カラヴァッジョは、人間を支配する逃れられない欲望の化身として、この少年を描いたのかもしれません。
なぜ「スキャンダラス」と言われたのか?
1・神を「地上」に引きずり下した
当時は、理想化された神(キューピッドは女神ヴィーナスの子ども)を描くのが常識。
信仰心に訴えかけるような絵が求められていた訳です。
しかし、カラヴァッジョが描いたキューピッドは、生身の人間(少年)そのまま。
泥臭く、挑発的で、性的な生々しささえ感じさせるその姿は、
当時の人々にとって「神聖さを汚すもの」として大きな衝撃を与えました。
2・見ているのではなく、見られていた!?
これがこの絵の最も恐ろしい点です。
通常の宗教画や神話画は、私たちが聖なる存在を「仰ぎ見る」構造。
しかし、このキューピッドは真っ直ぐにこちらを見ています。
例えるなら、「動物園に動物を見に来たつもりが、檻の中から自分の方がじっと観察されていた」ような驚きと恐怖。
本来「見られる側」であるはずの絵の中の人物が、見る側の世界に踏み込んでくるような感覚をおこし、
観る者を不安にさせ、そして惹きつけてしまうのです。
カラヴァッジョはどんな人だったのか?

カラヴァッジョ(本名:ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョCaravaggio, 1571–1610)
イタリア・バロック美術を代表する画家で、「劇的な光と影の表現」で知られています。
本人は気性が荒く喧嘩ばかり。しまいには、決闘で人を殺め、逃亡生活を送り、また喧嘩。
喧嘩ばかりの人生でしたが、生前からその実力認められ、ファンも多かったそう。
しかし、教皇から殺人の恩赦を受けれられるとヴァチカンに向かう途中で謎の死を遂げます。
そんなカラヴァッジョですが、西洋美術の流れを大きく変えた革新的な存在。
・強烈な光と影(テネブリズム): 真っ暗な背景から人物をスポットライトのように浮かび上がらせる。
・徹底した写実主義: 聖人であっても、汚れた足先や皺までリアルに描写。
・感情の瞬間を切り取る:物語の“決定的瞬間”を描き、まるで舞台のワンシーンのような緊張感があります。
カラヴァッジョ以前の絵は、「理想化された美しく神聖な世界」を描くのが主流。
(あくまでも私の主観ですが)それ以前の絵(例えば、ダヴィンチの≪最後の晩餐≫等)は、
登場する人物の会話は聞こえない印象。
しかし、カラヴァッジョの作品は、絵の中の人々の会話が絵から聞こえてきそうな印象を持ちます。
とにかく、臨場感がすごい!!
また、それまでの絵の主流がポーズを決めた写真館での写真なら、
カラヴァッジョの作品は日常の一場面をスマホで撮っているかのようなリアリティ感。
上に挙げた3つのカラヴァッジョの絵の特徴は、レンブラントやベラスケスにも影響を与えたといわれています。

まとめ:ロンドンにいるなら必見!
いかがでしたでしょうか?
今しか見られない、しかも無料で拝めるカラヴァッジョの傑作。
ウォレス・コレクションの豪華な館内と併せて、ぜひその「恐ろしくも美しい」世界を体験してほしいと思います。
また、私がカラヴァッジョの絵に出会うきっかけをくれたのが、
ロンドンの美術館・博物館の案内を日本語でしてくれる「アートローグ」の講座でした。(もう本当におススメです!)
主催のゆうき先生の説明が分かりやすく、そして楽しい!!
その絵の持つ意味や時代背景を知ると、ただ見るだけでは感じられなかった感動や画家やその当時の人々の思いを感じることが出来、なんだか賢くなった気分を味わうことも出来ちゃいます!!
私も毎回ほぼ一人で参加していますが、ほとんどの方がお一人で参加されているので、一人での参加でも全然OKです!
3月は大英博物館での講座が予定されています。
興味ある方は、ぜひこちらのリンクから各講座や内容についてご確認ください!!おススメです!!





