こんにちは!サトコです。
本日は私がイギリスで一番大好きな美術館、The National Galleryについてお話したいと思います。
The National Galleryはロンドンの中心地、トラファルガー広場の目の前に位置し、英国最大の絵画専門の国立美術館で2300点以上の絵画を所蔵しており、全て無料で鑑賞する事が出来ます。
今年で、なんと開館から200年を迎えるそうで、今回はロンドンきらりより、勝手に200歳を記念して、
「ザ・ナショナルギャラリー完全攻略版!皆さんに絶対に見てほしい作品や館内の効率よい回り方」を、シェアしたいと思います。
The National Gallery 概要
The National Gallery・ London
ナショナル・ギャラリー
開館時間:10:00~18:00(金曜21:00まで)
入場無料(※企画展は有料)
Trafalgar Square, London WC2N 5DN
攻略しよう!館内の回り方のコツ
とにかく、右も左も上も下(床まで!)も美しい絵画と建築様式に圧倒されてしまい、どこから見たらいいの?
ここはどこ?あなたは誰?状態になるはず「ザ・ナショナル・ギャラリー」
この迷子感は学生時代に世界史の授業を受けている時に味わう、昨日はフランス革命だったのに今日はイギリスですか?
私は、一体何を習っているのでしょうか?状態と似ているはず。
分かっているんです、ナショナルギャラリー側だって。
私の様な無知な美術初心者のために、エリア毎に時代や様式・テーマでお部屋を色分けしてくれていますから。
安心してください。色分け&番号分けされています!
番号と部屋の色でそれに対応する時代と様式が分かる
ナショナルギャラリー ロンドンには、約60の展示室があり、その多くが異なる色で塗装された部屋で分かれています。
これらの部屋は、展示されている作品の時代やテーマに合わせて色分けされており、訪問者が各時代の芸術の特徴をより理解しやすくなるように工夫されています。
具体的な部屋の数字や色の詳細は定期的に変更される可能性がありますが、大まかに一般的には以下のように大きく分かれています。
- 部屋 9~14:
- 色: 暖かいトーン、深紅色やクリムゾンなどが多い。
- 時代: ルネサンスから初期マニエリスム(15世紀から16世紀初頭)。
- 主な作品: レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロの作品。
- 部屋 15~19:
- 色: リッチで深い青や緑などの暗めのトーン。
- 時代: バロック期(17世紀)。
- 主な作品:フェルメール、 カラヴァッジョ、ルーベンス、ヴァン・ダイクの作品。
- 部屋 20~29:
- 色: ダークトーンからソフトグリーンやパステルカラー。
- 時代: 後期バロックからロココ、初期新古典主義(17世紀後期から18世紀)。
- 主な作品: レンブラント、カナレットの作品。
- 部屋 30~46:
- 色: ダークトーンから中立的なトーン、グレーやベージュなど。
- 時代: 19世紀の絵画(ロマン主義、印象派、ポスト印象派)。
- 主な作品: ターナー、ゴッホ、モネの作品。
※現在部屋1~8及び50~60が展示されているThe Sainsbury Wing galleriesは2025年まで閉鎖され改修中となっております。(2024年8月現在)
このように色分けされた部屋を巡ることで、展示作品の年代やスタイルを自然に理解しやすくなります。各部屋の色は、作品が最も効果的に見えるように設計されており、訪問者にとっては視覚的にも美しい体験となるはずです。
続いては、私オススメの回り方をお伝えします!
オススメの回り方
ナショナルギャラリーではハイライトルートというオススメの回り方があります。現在閉鎖されていますが、左側(バツが付いている部分)セインズベリーウィング側のAからCに向かって観ていくと時代を、15世紀:ルネサンス期➡18世紀:バロック期➡19世紀:印象派 順番に回ることができます。以下はナショナルギャラリーのオススメコースです。
私を含め多くの日本人にとって、美術館でわぁ!という瞬間は、「これ見た事ある~!」「これ美術の教科書にのっていたな~!」ではないでしょうか?
私達が親しみがある絵画というと、やはりゴッホやモネ・セザンヌ19世紀印象派あたりではないでしょうか?
とにかく見るものが沢山ありすぎるので、最初に目玉作品をじっくり鑑賞しながら、最後の方にルネサンス期や宗教色の強い絵画を見るのがオススメかなーと思います。 ※もちろん人によって好みが異なります。
ナショナルギャラリーでは各エリア大体30分前後で1時間半~2時間と見積もっていますが、気が付いたら数時間経っていて、観たかったエリアでは、すでにグッタリなんて事もあるので、
オススメは気になるor知っている作品から回ることをおすすめします。
私の場合のオススメは、Cエリア2024年8月現在ならば、日本人にポピュラーな45~44番エリアから回るのがオススメです。44番エリアはセザンヌ・モネ・ルノワールが展示され、誰もが一度は見た事がある名作が惜しみなく展示されています。
さらに深掘りしたいなら
- 日本語音声ガイドも借りる(有料):ゆっくりマイペースに隅から隅までガイド付きで回ることが可能です。
- 無料のグループツアーに参加する:こちらは英語のみで平日限定になりますが、ナショナルギャラリーの館員が各絵画について説明してくれます。英語の勉強にもなりますね!
※時期によっては開催されていない事もありますので、公式ホームページでご確認ください
➡ナショナルギャラリー公式ホームページ - 日本語ガイドブックを購入して見ながら回る:お土産ショップで購入可能です。
- ナショナルギャラリー公式YouTubeや山田五郎さんやまりんぬさんのYouTubeや書籍を見て予習してくる。
私がめちゃくちゃ推しなのは、YouTubeでちょこっと予習する。ヨーロッパの歴史や美術が改めて面白いな!と思えたのは、山田五郎さんや、まりんぬさんのおかげと言っても過言ではないです。
絵画の中に込めた意味合いを細かく説明されているのと同時に、ヨーロッパ歴史や宗教背景から当時のびっくりするような常識や生活を興味深く説明されていて、私はイギリス史を皮切りに、ヨーロッパ史にも興味が広がりました。
そして、イギリスやヨーロッパにいる醍醐味は、その歴史的芸術作品や建築物が実際に今も当時とほぼ変わらず、触れることが出来ることではないでしょうか?
続いて、ナショナルギャラリーで必ず見てほしい作品をいくつか紹介します。
これだけは観て!おすすめの作品
45番エリア The Execution of Lady Jane Grey Paul Delaroche
ヘンリー8世逝去からエリザベス1世が女王になるまでも、多くの血が流れたと言われています。それらの史実の中で最も悲劇的だったのが、九日間の女王レディ・ジェーン・グレイ。ジェーン・グレイは1554年の処刑当時、わずか16歳4ヶ月の若さでした。
フランスの画家ポール・ドラローシュによる1833年の油彩画です。作品は、16歳のレディ・ジェーン・グレイが1554年に処刑される瞬間を劇的に描いています。
作品の詳細
ドラローシュの絵画は、ジェーン・グレイが処刑台に立つ瞬間を描いています。彼女の目は布で覆われており、両手を延ばして処刑台を探ろうとしている姿が印象的です。ジェーンの周囲には、彼女を支える二人の侍女と、斧を手にした処刑人が描かれています。ドラローシュは、ジェーンの純粋さと無垢さを強調し、彼女の運命の悲劇性を視覚的に表現しました。
絵画の色調は暗く、悲劇的な雰囲気を醸し出しています。画面全体にわたる暗い背景は、ジェーンの白いドレスを際立たせ、彼女の運命の残酷さを強調しています。この作品は、ドラローシュの作品の中でも特に有名で、観る者に深い感情的な影響を与えることで知られています。
44番エリア The Beach at Trouville Claude Monet
フランスの印象派画家クロード・モネによる1870年の絵画です。この作品は、モネが妻カミーユとともに、フランスの海岸町トゥルーヴィルを訪れた際に描かれました。この作品の他にもナショナルギャラリーでは、名作「睡蓮の池と日本の橋」もありますから探してみてくださいね!
作品の特徴
この絵画は、海辺にいる人々とその背後に広がる海の風景を描いています。モネは、光と色の微妙な変化を捉えることに重点を置いており、特に日差しが作り出す影と反射が巧みに表現されています。砂浜に立つ人物や波の動きは、モネの特徴である短い筆致で描かれ、まるで風や光がその瞬間に変わりゆく様子を感じさせます。
「The Beach at Trouville」は、モネの初期の印象派作品の一つであり、彼の光と色彩に対する探求が顕著に現れています。また、この作品は、モネが後に展開していく「光の画家」としてのスタイルの基礎を築いた時期の作品でもあります。
この絵は、日常の風景を印象派の手法で描くことで、当時のアカデミックな絵画とは一線を画し、モネの革新性を示すものとなりました。
43番エリア Sunflowers Vincent van Gogh
ひまわりは、彼の最も有名な作品の一つで、1888年にフランスのアルルで制作されました。ナショナルギャラリーに所蔵されている「ひまわり」は、ヴァン・ゴッホが描いた複数のひまわりの絵の中の一つで、明るい黄色の花が特徴的です。ヴァン・ゴッホは、大好きなポール・ゴーギャンが、彼を訪れる際の客室を飾るために、ひまわりをテーマにした一連の絵を描きました。
ゴッホの奇才奇人で空回りライフぶりは山田五郎さんやまりんぬさんのYouTubeでも紹介されています。
面白いのでチェックしてみてくださいね!
彼はこのシリーズで、黄色を基調とした明るい色彩の調和を探求し、生命力と光を表現しようとしました。「ひまわり」は、ヴァン・ゴッホの象徴的なスタイルを象徴する作品であり、彼の独自の色彩感覚と筆致が際立っています。ゴッホのこの有名なひまわりの絵は、日本美術からの影響もこの絵に大きく反映されていたと言われています。
技法と特徴
この作品では、花瓶に挿されたひまわりが描かれています。背景からひまわりに至るまで、全体にわたって強い黄色が支配しており、光に対するヴァン・ゴッホの敏感な感覚が見て取れます。絵具は厚く塗られ、筆跡がはっきりと残ることで、ひまわりの質感や生命力が強調されています。
「ひまわり」は、ヴァン・ゴッホの作品の中でも特に広く知られており、彼の人生と芸術における希望と情熱を象徴するものとされています。この絵は、彼の没後に評価が高まり、現在では世界中の美術館やギャラリーで大切に展示されています。
ロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されている「ひまわり」は、東京新宿にある、SOMPO美術館にも所蔵しており、多くの日本人にも愛される必見の作品です(現在7枚中6枚が現存しています)
この他にも、40番エリアはこの他にもマティス・ルソーやターナーなどが、目白押しで圧巻です。
34番エリア Whistlejacket George Stubbs
18世紀イギリスの画家ジョージ・スタッブス(George Stubbs)による1762年頃の作品で、馬をテーマにした名作の一つで、ナショナルギャラリーの中でもひと際目立ち存在感を放っています。
スタッブスは動物画、特に馬の絵を得意とする画家として知られており、「Whistlejacket」はその代表作です。この作品に描かれている馬は、ウィスルジャケットという名の競走馬で、4歳で優勝を果たした実在のサラブレッドです。馬主であった第2代ロッキンガム侯爵、チャールズ・ワトソン=ウェントワースの依頼により描かれました。
作品の特徴
「Whistlejacket」は、背景を省略したシンプルな構図が特徴です。馬がほぼ実物大で描かれており、力強く優美な姿が生き生きと表現されています。背景のない構図は、馬の動きと存在感を際立たせ、観る者の視線を馬の姿に集中させます。
この作品は、34番エリアに続く一番奥突き当りに展示され、アーチ状の通路の向こう側からも、はっ!とするくらい躍動感がある傑作品として、多くの来館者を魅了しておりスタッブスの芸術的才能を知る上で欠かせない一枚です。
12番エリア The Ambassadors Hans Holbein the Younger
ドイツ出身の画家ハンス・ホルバイン・ザ・ヤンガー(Hans Holbein the Younger)が1533年に描いた絵画です。ルネサンス期の肖像画の中でも特に象徴的で謎めいた作品として知られています。
「The Ambassadors」は、フランス大使ジャン・ド・ディントヴィルとフランス司教ジョルジュ・ド・セルヴの二人が、描かれた二重肖像画です。二人は豪華な衣装に身を包み、様々な科学機器や楽器、書物などが並べられたテーブルの前に立っています。これらのアイテムは、当時の複雑な政治背景を象徴しています。
象徴と意味
「The Ambassadors(大使たち)」は、表面上は二人の高貴な男性の肖像画ですが、ヘンリー8世がアンブーリンとの婚姻を成立させるために、カトリック教会から離脱し、プロテスタント改革や宗教的緊張が高まる中で描かれました。この二人はまさにローマ教会から派遣された大使たちでした。
棚の上段には日時計や天球儀などが描かれており、大きな意味合いとして「天」を意味しています。
中段には地球儀、会計士のための算術所・リュートの向かいに開かれた本は、讃美歌の楽譜。これは2人がキリスト教世界の統一を望んでいたことを示しています。
しかしその横にあるリュートは弦が一本切れており、対話が成立しなかったという意味が込められています。
つまり中段は地上(現生)を意味しています。さて、その下の不思議な形の何か…皆さんは何が見えますか?
ちょっと左から見ると・・・?
アナモルフォシス効果
この作品で最も有名なのは、キャンバスの下部に描かれた奇妙に歪んだ形状の「骸骨」です。この骸骨は、見る角度によって正しく見える「アナモルフォシス」という技法で描かれています。この効果は、死と儚さを示唆する「メメント・モリ」として、作品全体に対する警告のメッセージと解釈されています。骸骨は、地位や知識も死によってすべてが無意味になるというルネサンス的な思想を反映しています。
つまり、下段は「死」を意味しています。
このように、画面に描かれたオブジェクトや骸骨は、宗教、科学、政治、哲学など、多くのテーマを内包しています。
この絵は、ホルバイン自身は宗教改革に関連した複雑な状況に身を置いており、作品には当時の宗教的および政治的な対立と、人生の儚さを反映されています。この時期のヨーロッパ史をチェックしてみると、この絵の読み取りが面白くなるはずです!またこちらの絵画の実物は、かなり大きなサイズです。実物を前に角度を変えて見るとはっきりと頭蓋骨が見えて興味深いですよ。
28番エリア The Arnolfini Portrait Jan van Eyck
アルノルフィーニ夫妻の肖像 フランドルの巨匠ヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck)が1434年に描いた油彩画で、西洋美術史における最も重要で象徴的な作品の一つとされています。この絵画は一見多くの人が、ちょっと怖い・・と言うのですが、いや!すごいんですよこの絵画。ざっくりですが、解説しますね。
この絵画は、ジョヴァンニ・ディ・ニコラオ・アルノルフィーニとその妻を描いた肖像画です。アルノルフィーニは、イタリア出身の商人で、彼の富と地位を示すために、この肖像画が制作されました。夫妻は豪華な室内で向かい合い、右手をつないでいます。
この絵画の実物は小さなサイズなのですが、細部にわたる繊細な描写と豊かな色彩が、この作品の際立った特徴的で、じっくり見てみると、細部にわたりその時代の象徴性(宗教的な意味合いや社会的な立場なのどの意味合い)を描写しており、更に画家自身も、この絵画の中にちゃっかり登場しているのを、発見するのが楽しくなる絵画です。
象徴と意味
「アルノルフィーニ夫妻の肖像」は、豊富な象徴性に満ちています。
例えば、妻のドレスのたるんだ部分は、当時の豊かさと高貴さを象徴しています。また、絵の中央には鏡が描かれており、鏡には二人の他にさらに二人の人物が映り込んでおり、青と赤の衣装をまとった二人の男性が戸口に立っているのが見えますが、青い衣装がヤンファンエイク自身で、赤い衣装は弟子だと言われています。更には鏡の上に画家自身が壁に美しい字体のラテン語で署名を残しています。「ヤン・ファン・エイクここにありき 1434」(Johannes de Eyck fuit hic 1434)
また、部屋に置かれた犬は、忠誠や忠実さを象徴し、シャンデリアに灯された一つの蝋燭は、神の存在を表すとも言われています。このように、作品全体で細部にわたって意味を持ち、複数の解釈が可能なところが多くの人を魅了しています。
こちらも山田五郎さんのYouTubeで解説されており、この絵の凄さが分かるはずです。チェックしてみてくださいね!
まとめ
私はちょっと落ち込んだ日や、お天気が悪い日のロンドンは、カメラをもってふらりと、美術館巡りをしていました。
そして、夏の美しい日は、トラファルガー広場周辺をぐるっとお散歩しながら、ナショナルギャラリーに立ち寄りカフェでお茶をするのも、大好きな時間でした。また金曜日は21時まで開いているので、お仕事の後や夏の日の長い時期は、夕方からゆっくり鑑賞するのもオススメです。
イギリス生活でとにかく感動しっぱなしだった部分は、国の歴史や芸術へ惜しみない愛を感じるところです。
そしてそれを、無料で市民に公開しているところも。
少し殺伐としたロンドン生活に疲れてきた時に、美術館巡りは私にとって、ほっと癒される大切な時間でした。
皆さんがナショナルギャラリーに行く時に参考になると嬉しいです。
ではまた!!