5月後半から7月にかけては、イギリスで1番快適に過ごせるシーズン。
冬はどんより曇っているロンドンの空もすっきりと晴れ上がり、青空と緑の芝生のコントラストを眺めているだけで満たされます。
でも、風景だけでは物足りないような気が…
そう、その風景には何と言ってもビールが欠かせません!
日本と違って、夏でも湿度が低くカラッとしているロンドンで、天気の良い日に外で飲むビールは、それはもう格別な美味しさなのです!
イギリスは、パブ文化が有名で、パブで飲むビールはもちろん美味しいのですが、スーパーで売っているビールを買って、おうちの庭でバーベキューをしながら飲むビールもまた、最高に美味しいのです!
筆者は、日本にいた頃にはあまりビールを飲みませんでしたが、イギリスに来てからよく飲むようになりました。
それは、イギリスの夏がビールを飲むのに最高の環境だからということだけでなく、日本とイギリスのビールの違いも大きいと感じています。
というのも、イギリスで売られているビールは“エール”と呼ばれる種類のものが多く、筆者はこのエールが好きなのだと気がついたからです。
そこで今回は、イギリス生まれのビール、“エール”についてご紹介します。
ビールについての基礎知識や、ロンドンのスーパーで買えるオススメビール情報をお届けしますので、これからのビール選びの参考にしていただけたらと思います。
ビールの基礎知識
ビールの原料
ビールとは、モルト(麦芽)、ホップ、酵母、水、の主に4つの原料によって作られるお酒です。
それぞれの原料の産地や種類の違いによって、味が大きく変わります。
この4つの原料に加え、米、とうもろこし(スターチ)、果実、香辛料、ハーブ、糖類などの副原料を加えることで、さらなる味や香りの変化が生まれます。
ビールの製造方法
主に、①麦芽の製造②麦芽の粉砕③仕込み④発酵⑤熟成⑥濾過・熱処理⑦容器詰めという工程で製造されます。
ビールの種類「エール」と「ラガー」
ビールの種類とひとことで言っても、その分類方法によって何種類にも分けることが可能ですが、もっとも大きくは2種類に分けられます。
それが「エール」と「ラガー」です。
エールは上面発酵、ラガーは下面発酵で作られます。
上面発酵とは、麦汁の表面に酵母が浮き上がることを言い、高い温度、短い期間で発酵します。
反対に、下面発酵とは、底の方に酵母が沈んでいくことで、低い温度、長い熟成期間で発酵します。
「エール」と「ラガー」とは、発酵方法の違いによる分類だったのですね。
これ以外に、「自然発酵」という方法もありますが、私たちが普段飲むもののほとんどは、上面発酵か下面発酵によるビールです。
イギリス生まれの“エール”
エールは、イギリス発祥とされています。
「エール(Ale)」とは、古代英語の「ealu」が語源となっており、その意味はずばり「ビール」です。
古代ケルトの時代から作られており、5世紀頃にはイギリス全土にエールが広まっていたようです。
中世以降、多くの教会では巡行者をもてなすためにエールが作られ、振る舞われていました。
一般の家庭では、エールビールの醸造は女性の仕事とされ、自家醸造ビールを売ることを生業にしていた人も多くいたそうです。
エールは、私たち多くの日本人がイメージする、キンキンに冷やしてグビッとのど越しを楽しむビールというよりは、ワインのように味わいや香りを楽しむビールです。
また、香りが引き立つ温度は8~13℃と言われているため、冷やしすぎるとその味わいが半減されてしまいます。
うちの夫はロンドンに来たばかりの頃、パブでビールを飲んで「ぬるい」と文句を言っていましたが、それはエールだったからこそなんですね。
豆知識:
イギリスでは、ビールというと、基本的にはエールビールのことを指します。
パブや店頭で売られているビールの多くも、エールが中心です。
反対に、日本で人気のキリンラガービールやアサヒスーパードライはラガーで、日本で飲まれているビールの多くはラガーです。
それは、日本のビール醸造技術を主にドイツから学んだことに由来します。
ラガーはドイツが発祥で「ラガー(Lager)」とはドイツ語で「貯蔵」という意味です。
エールの種類
エールの中でも、さらにその製造方法や原料の違いによって、様々な種類があります。
Pale Ale(ペールエール)
近年、日本でもクラフトビールなどで人気が出ていますが、イギリスでビールと言えばこの「ペールエール」が中心的存在です。
ペールエールの「ペール(Pale)」は薄いという意味。
もともとのエールよりも薄い色合いだったために、このように呼ばれるようになったそうです。
イングランドのバートン=オン=トレントという町では、古くから修道院でビールが製造されており、1630年頃にこの町で作られた「バートンエール」がペールエールの元祖と言われています。
IPA(アイピーエー)
IPAとは、Indian Pale Ale(インディアン・ペール・エール)の略で、18世紀末のイギリスで誕生しました。
植民地であったインドに船でビールを運ぶ際、長期間の船旅による劣化を防ぐために、防腐剤として大量のホップを使用し、アルコール度数を高めて作られたものがIPAのはじまりとされています。
ホップの強い苦みと香りが際立っているのが特徴です。
IPAのなかでもさらにセッションIPA、アンバーIPA、アメリカンIPA、ホワイトIPAなど、様々な種類が生まれています。
Stout(スタウト)
スタウトは、アイルランドのギネスビールに代表される黒いビールです。
黒くなるまで焙煎した大麦を使うため、あの独特の色になります。
スタウト(stout)とは、英語で「強い」という意味で、その名の通り、苦みと酸味が強く、濃厚な味わいで、クリーミーな泡も特徴的です。
ロンドンのスーパーで買えるエールをご紹介!
では、ビールに関するうんちくはこれくらいにしておいて、ここからは、英国の醸造所による、ロンドンのスーパーで気軽に購入できるエールビールをご紹介していきます。
下記に載せている全てのビールを試飲しました!
が、筆者はIPAが好きなため、IPAばかりに偏ってしまいました…スミマセン
FULLER’S LONDON PRIDE (Amber Ale)
1845年創業の老舗ビール醸造所Fuller’s(フラーズ)のその名も「ロンドン・プライド」。
名前の通り、イギリスのエールビールの代表的存在です。
程よい苦みと甘い香りで飲みやすいビールです。
BREWDOG PUNK IPA (IPA)
2007年にスコットランドで創業したクラフトビールメーカーBREWDOG(ブリュードッグ)。
東京の六本木にも直営店を構えているため、渡英前からご存じだった方もいらっしゃるかもしれません。
PUNK IPAはトロピカルフルーツのような香りと、後味に苦みが残るのが特徴です。
BREWDOG SHORE LEAVE (Amber Ale)
同じくBREWDOGによるエールですが、こちらはアンバーエールと呼ばれるものです。
「アンバー(Amber)」とは英語で「琥珀(色)」のことで、その名の通り、少し赤みがかった琥珀色をしています。
フルーティーさよりも、コクや苦みをより強く感じるビールです。
BREWDOG GRIND (Coffee Stout)
またまたBREWDOGですが、こちらは少し変わり種。
Coffee Stoutとあるように、ビールというよりもコーヒーのような味わい。
カクテルに使われる「カルーア」に似ています。
かなり甘めの味なので、食事と一緒に楽しむよりは、食後に飲むのがいいかもしれません。
THE WILD BEER CO UNDER THE SUN (Session Hazy IPA)
イングランドのサマーセットに拠点を置く醸造所THE WILD BEER CO(ザ・ワイルド・ビア・カンパニー)。
チーズ工房のキッチンからスタートしたというだけに、発酵に対して強いこだわりを持っているそうです。
このビールはオレンジやマンゴーのフルーティーな香りと甘みがあり、とても飲みやすいです。
Session IPAとは、IPAの中でも苦みを抑え、アルコール度数も低めに作られたものです。
また、Hazy(ヘイジー)とは「濁った」という意味で、少し濁った色をしています。
BEAVERTOWN NECK OIL (Session IPA)
こちらは北ロンドンのブリュワリーBEAVERTOWN(ビーバータウン)。
ビールの味はもちろんのこと、そのデザイン性も高く評価されています。
中でも人気が高いのがこのNECK OIL(ネックオイル)で、筆者はこのビールが大好きで、常に冷蔵庫にスタンバイしています。
このビールもSession IPAなので、苦みが少なく軽く爽快な口当たりで、夏の暑い日にはグイグイ飲んでしまいます。
BEAVERTOWN LUNAR HAZE (Hazy IPA)
こちらもBEAVERTOWNのビールLUNAR HAZE(ルナーヘイズ)。
Hazy IPAなので、少し濁りのある見た目です。
NECK OILよりもさらに苦みが少なくフルーティーで、ビールが苦手な女性にも飲みやすい味です。
ポップなデザインも目を引きますね!
CAMDEN PALE ALE (Pale Ale)
CAMDEN TOWN BREWERY(カムデンタウンブリュワリー)は、その名の通り、ロンドンのカムデンにある醸造所です。
イギリスの醸造所にしては珍しくHELLS(ヘルズ)というラガービールを看板商品にしています。
しかしそこはやはりイギリスの醸造所、もちろんエールも作っており、このPale Ale(ペールエール)がその代表格です。
すっきりとした味でゴクゴク飲めます。
缶のデザインもシンプルだけどオシャレですね。
ST AUSTELL BREWERY PROPER JOB (IPA)
イングランド南西部コーンウォールで、1851年に創業したイギリスを代表する老舗醸造所St Austell(セント・オーステル)のビールです。
柑橘系の爽やかな香りと、しっかりとした苦みが特徴です。
Proper Job(良い仕事)の名の通り、ホップの苦みを活かした“IPAらしさ”を存分に味わうことができます。
Two Tribes METRO LAND LONDON (Session IPA)
ロンドンのキングスクロス駅近くに拠点を構えるブリュワリーTwo Tribes(ツートライブス)。
ビールを作るだけでなく、芸術家、音楽家、シェフなど、様々なジャンルのクリエイターとのコラボレーション活動を展開しています。
味も香りも薄めで、筆者には物足りない感じがしましたが、クセのないビールをグビグビ飲みたい方には、ちょうどよいかもしれません。
こちらのMETRO LAND(メトロランド)シリーズは、LONDONだけでなく、NEW YORK、TOKYO版もあります。
Tiny Rebel PINEAPPLE EXPRESS IPA (IPA)
南ウェールズはニューポートにある醸造所Tiny Rebel(タイニーレーベル)。
イギリス全土の醸造所が集まるビール品評会において、ウェールズの醸造所として初めて大賞を獲得したことのあるブリュワリーです。
このPINEAPPLE EXPRESS IPAはその名の通り、パイナップル味です。
苦みもほとんどなく、ビールというよりも、もはやパイナップルジュースです(笑)。
しかし、意外とアルコール度数が高めなので、飲み過ぎないように気をつけないといけないタイプです。
ちなみに、これらのビールを試飲するため、筆者は友人たちと一緒にビール試飲会を実施しました。
気の置けない仲間と楽しく飲めば、どのビールを飲んでも美味しいということがわかりました!
って、そんなこと、最初からわかってたやろ!!!
ビール工場見学ツアー in London
イギリスの醸造所による各種エールビールをご紹介しましたが、ロンドンには工場見学できるビール工場があるのをご存じでしたか?
CAMDEN TOWN BREWERYとFuller’sは、それぞれの醸造所において、ビール工場見学ツアーを実施しています。
醸造所の歴史を知ったり、ビールの製造工程を見たりできるのはもちろんですが、なんといっても様々な種類のビールの試飲ができるのが嬉しいポイント!
在英中の方はもちろん、旅行でロンドンに来られる方も気軽に参加できるツアーですので、ぜひ訪れてみられてはいかがでしょうか。
まとめ
イギリスの醸造所によるエールビールをたくさん紹介しましたが、皆さんのお気に入りビールはありましたでしょうか?
今回ご紹介した以外にも、数えきれないほどたくさんの種類がありますので、いろいろ試して自分のお気に入りのエールを見つけてみてくださいね。
これからの季節、青い空と芝生のコントラストを眺めながら、美味しいエールビールを存分に味わい、イギリスの短い夏を楽しみましょう!
飲み会のお誘い、いつでもお待ちしています!呼ばれます!