「駐在妻」と聞くと、なんとなく優雅なイメージ。
でも実際は、言葉も文化も違う土地で家族を支える、大変な日々の連続です。
毎日起こる様々な問題を解決しながら、いかに家族が心身ともに健康な状態で生き残れるようにするか努力し続ける。
海外で暮らすことは、「無人島でのサバイバル生活」と言っても過言ではありません。
この記事では、駐在妻歴3年(フランス、イギリス)の私のリアルな体験・苦悩・涙の日々。
それらをどう乗り越えたか、そして楽しむためのコツをお伝えしたいと思います。
今回の記事、第一弾「フランス暗黒期編」では、フランス田舎街での生活を中心にお送りします。
第二弾「イギリスの中の日本編」は、イギリス・ロンドンでの生活を中心にお送りします。
この記事が、駐在妻真っただ中の方、そしてこれから駐在妻になる方の参考に少しでもなれば嬉しいです!


人生最大の暗黒期
私の駐在妻生活は、フランスの田舎町からスタートしました。
「フランスで暮らせるの~?!」「こんな機会ないし、行くいく!!」と能天気に帯同する事を決めました。
初めての海外暮らしにも関わらず「まあ、なんとかなるよね」と思っていた私。能天気過ぎる。
「暮らしていればフランス語も話せるようになるし、子供たちもフランス語ペラペラになっちゃうかも?フランス語話せるなんておしゃれすぎる~!!」なんて思っていました。
「フランスに住む」というおしゃれな響きに釣られすぎて、現実を見ていませんでした。本当に能天気過ぎる。
日本を離れる寂しさや不安はもちろんありましたが、「人生でそうそう出来る経験ではない!」と思って、
4歳と2歳の子供を連れて家族全員でフランスにお引越し。
フランス田舎町での葛藤・・・自分一人で何も出来ない、自信の喪失

フランスで住んでいた場所は、ロンドンのような都会ではなく田舎町。
周りを沢山のブドウ畑に囲まれた、のどかなところでした。
もちろん日本人コミュニティもありませんし、日本食材を取り扱うお店もありません。
在住している日本人は片手で数えられるほど。住んでいることに寧ろ驚くレベルの田舎町!!
もちろん、日々の生活も全てフランス語です。
「ボンジュール」しかフランス語を喋れなかった私は、
何をするのも夫頼り・・・
買い物に行くにも、病院に行くにも、学校の手続きや日々の生活での問題も、全て夫に相談しないと解決できない。
そして、田舎だったのでどこへ行くにも車が必要。日本で運転免許を取ってから、一度も車に乗っていなかった私。
「事故にあったらどうしよう?」と最初は怖くてどこへも一人で行けない状態でした。
言葉が分からない事で、日本では大人として当たり前にできていたことが、自分一人では何もできない。
フランス生活が始まって、何ひとつ一人で出来ない自分に、どんどん自信が失われていきました。
日本では簡単にできる事が出来ないのは、本当にストレスでした。
初めのうちは、何をするにも時間がかかり、これが地味に大変。
買い物に行くにしても、欲しい物はフランス語でなんというのか、欲しい物と同じような商品がフランスにあるのか、無い場合の代用品があるのか、はたまたその欲しい物がどこ売っているか、いちいち調べたりしなければならず、時間がかかる。
Google、Google翻訳に一日何十回とお世話になりました。
フランスで初めてできた友達は、Google翻訳と言っても過言ではいぐらい頼りにしていました。本当に(泣)
圧倒的な言葉の壁と孤独

家族以外と日本語で話せないし、フランス語も話せない
フランスに来て実感したのは、英語は喋れなくても
なんとなく分かったりすることもあると思うんですが(ありがとう義務教育!!泣)
フランス語にかすりもしない人生を送ってきたので、全然分からない。
毎日勉強しているのに、全然分からない。難しすぎる。
フランス語が喋れないから友達もいないし、友達もいないからフランス語も日本語も喋れない。
私がお喋りできるのは、家族だけ(主に子供)。
たまにビデオ通話を友達や家族とする時に、溜め込んだお喋り欲を爆発させていました。
そして、日本語も家族としか喋らないので、たまに喋ると言葉が出てきませんでした(笑)
家以外に居場所がない
現地校に通い始めた子供たちは、慣れない環境にストレスが溜まり、毎朝行きたくないと泣く叫ぶ日々。
夫も初の海外勤務で英語にフランス語にと、かなりストレスが溜まっていたのか、
休みに入るタイミングで良く熱を出していました。
家族のストレスがかかる環境での生活を心配する一方、悩める環境すら羨ましいと思うほどに、
家以外に自分の居場所がない私は孤独でした。
夫が出勤し、子供たちを学校へ送り出した後、子供たちを迎えに行くまで、買い物や家事をする以外のことはなく、
ずっと家にいる毎日。
田舎なので、語学学校がある訳でもなく、特段何か観光するような場所があるわけでもなく、
一緒にランチに行けるような友達もおらず・・・。
お出かけをしようにも、言葉が分からないのが怖くて外出できない。
「家族以外の誰かと話したい!!家族以外での私の「居場所」も欲しい~!日本に帰りたい。」と何度も何度も夜にこっそり泣いていました。

育休以上のメンタルの落ち込み、満たされない承認欲求

孤独だからと言っても、暇ではない毎日。
何をするにも時間のかかる日々の家事に、子供の送り迎え、フランス語の勉強、
子供たちの先生とのメール作成で潰れる一日。
なんだかんだで毎日忙しいにも関わらず、日本の会社勤めで満たされていた
「誰かの役にたっている」
「誰かにママとしてだけではなく、私個人として認められている」
という承認欲求が追加で補充されないまま、じわじわとなくなり続ける日々。
自分の居場所が家庭にしかないので、私を評価してくれる人は「夫」しかいない状況。
夫は感謝の言葉を口にしてくれる人なのですが、
「誰かの役にたちたい」「母として妻としてではなく、私として認められる場所が欲しい!」と溜まり続けるストレス。
メンタルとの向き合い方
今から振り返るとこの時期(暗黒期)のメンタルは、育休中の感覚と近いかなと思います。
社会から取り残されたような、本当は色々家族の為に働いているのに、
「私、今日一日何してたんだっけ?何もしていない!」で終わってしまう毎日。
フランスに行ってからのメンタルは、育休中の虚無感に、家族以外私を知る人がこの国には存在しない、コミュニケーションも取れないという疎外感が加わり日々モヤモヤモヤモヤ。
今までの人生の中でも精神的にかなり辛かったです。
フランス語学習に全力を注ぐ
フランスに来てから、毎日毎日モヤモヤモヤモヤ。
自信を失ったり、孤独だったり、満たされない承認欲求を解消するには、
まずはフランス語が喋れるようにならないと何も始まらないと思い、毎日ひたすらフランス語を勉強。
日本の会社が運営しているオンラインのフランス語レッスンを受けたり、現地のフランス人に教えたもらったり、
教会が無料で開催している外国人向けのフランス語講座に通ったりと、フランス語漬けでした。
そのおかげか、本当に少しずつ少しずつ分かる事が増えてきたり、覚えたフレーズを言えたりと日々の中で成長を感じられるようになっていきました。
日記を書く、自分の考えや価値観を整理
日々のモヤモヤを整理するために、毎日日記もつけていました。
これが、自分の将来や価値観について考える良いきっかけとなり、更に知識を深めるために色々なジャンルの本を読みました。
日本にいた頃は、日々の暮らしが忙しくて色々と物事を深く考えたり、本を読む機会もなかったのですが、
駐妻生活をきっかけに色々な本を読み、今まで知らなかった世界を知る事も出来ました。
そして、少しずつですが、自分の知識も増え、自分への理解が深まり、価値観の整理が出来た事で、心穏やかに過ごす為には自分に何が必要か確認することもできました。
「駐在妻になったからこそ、今まで気が付かなかったことに沢山気が付くことが出来た!」と感じる事ができるようにもなりました。
新しい習い事に挑戦、達成感を実感
「今までやりたいと思っていたけど忙しくて出来なかった事をやろう!」と決意。
オンラインで今までやりたかったけど出来なかった事も習い始めました。
フランスに来て約一年、新しく習い始めた事が出来るようになったり、語学の成長を感じることで、自信をすこしずつ取り戻し始めました。浮き沈みはありましたし、先の見えないフランス語の習得に白目を剥く毎日ではありましたが、
「もう日本に帰りたよ~」と言って泣く回数も少しずつ減っていきました。
同じようにフランス語を学ぶ人に出会ったり、子供たちのお友達の両親と仲良くしなれたりと、少しずつ縁もゆかりもない異国の地フランスで、つながりや居場所ができ始めました。
最大の難関現れる 泣き叫びながらの登校

フランスに来てから、ちょうど一年経ったタイミングで日本に一時帰国しました。
その後フランスに帰ってきてから、現地校に通う長男は毎朝泣き叫びながら登校するようになりました。
行き始めたタイミングから嫌がってはいたのですが、泣き叫ぶような事はなかったのです。
教室の前で泣き叫びながら入室を拒否。学校中に響き渡る叫び声。その叫び声を聞きつけて校長先生までも登場。
そんなに嫌なら休んでもいいやと思って学校を休ませたりもしました。
担任の先生が、とても熱心な先生だったので日々メールでやりとりし(もちろんフランス語)、長男の抱える不安を解消できないかと色々と意見を交換しました。
余談ですが、
会話は難しいので、先生とメールでのやりとりをお願いしたのですが、これがなんとも重労働。
まず日本語で言いたい事をまとめる、その内容をフランス語にGoogle翻訳、知らない単語やニュアンスが異なりそうな箇所を辞書で確認、日本人のフランス語の先生に添削してもらい、修正。
半日ぐらいかけてメールをいつも書いていました。
無力な自分と泣き叫ぶ子供
日々の様子や子供がどう思っているかを先生に伝えたいのに、伝えられない。
ここでも言葉の壁が・・・私が喋れないせいで子供の辛さを代弁する事が出来ない。
子供を守ってあげられるのは、母親である自分しかいないのに、自分を無力に感じました。
泣き叫ぶ我が子をどうにか学校に連れていき、私も送った後に大泣きの毎日。
「先生が怖い」「フランス人なんて大嫌い」「日本に帰りたい」「僕の友達は日本にいる友達だけ」
そんな言葉を聞くたびに、また親として無力さを感じ、フランスで生活することが子供に深い傷をつくってしまったのではないか、どうしたらいいいのか分からず、途方に暮れる日々でした。
毎日一緒に授業に参加した3か月
そんな長男の様子をみた担任の先生から、私も一緒に授業に参加する許可をもらうことが出来ました。
最初は2時間一緒に参加して、一緒に帰宅
しばらくしてからは、午前中まで
慣れてきたら午後は一人で
と3か月ほどかけて少しずつ少しずつ、一緒にいる時間を減らし一人で学校に居られる時間を作っていきました。
最初は私が横にいないと、不安がって何も出来なかった長男も、
この3か月を通して少しずつ私から離れ、
約3か月の期間を要しましたが、一人で行く事が出来るようなりました。
この間、何度も何度も、もう日本に帰ったほうがいいかもと思いました。
でも献身的に支えてくれた担任の先生や、泣き叫ぶ長男を抱える私を見てすれ違うほかのお父さんやお母さんからもらった励ましの言葉。
また、私が授業に参加することでクラスの子供たちも私のことを認識してくれ、仲良くなることで、その親との交流が出来たりと、「つながり」のお陰で、どうにか長男は学校に一人で通う事が出来るようになりました。
本当に感謝しかありません。
学期末には、担任の先生と思わずハグをしてお互いを称えあったのも今では良い思い出です。
子どものメンタルの崩壊に向き合う
私は自分のメンタルよりも、子供のメンタルが壊れそうになったことが一番辛かったですし、ダメージが大きかったです。
子供を親が支えてあげられる範囲も限られていますし、結局最後は子供自身が乗り越えていくしかないと思います。
そうは言っても、日に日に表情が強張り、表情がなくなっていく長男の顔を見るのは辛かったですし、
その当時は、私自身も自分のことでいっぱいいっぱい。
長男にしっかりと向き合い、支えて同じ目線で寄り添ってあげられているのか、不安で不安で堪らなかったです。
どうしていいか分からない日々でも、ただひたらすら子供たちに「大好きだよ」「〇〇くんは、ままの宝物だよ」
とは伝えていました。
そのおかげかどうか分かりませんが、今でも時たま「僕はままの宝物なんだよね?」と嬉しそうに聞いてきてくれます。
その後も「宿題やりたくない!」「フランス語勉強したくない!」の日々のバトルは続きますが、
イギリスに来ても同じような事を言っているので、どの国の宿題でも宿題と名がつくものは嫌だという事が分かり、少しほっとしたような。
私なり駐在妻生活を楽しむための3つのポイント
そんな駐在妻生活を通して、何かモヤモヤしているときって、この3つのどれかが欠けていたり、
自分で認識できていなかったりする時なのでは?と思い、それからはこの3つを意識して生活するようにしています。
人間なので波はありますが、この3つの切り口で自分の日々の生活を見直すと私は比較的心穏やかに過ごす事が出来ています。
「挑戦」すること
- 語学試験に挑む。
目標があるとモチベーションもあがりますし、自分のレベルを可視化することが出来ました。 - 新しい習い事を始める
今の時代は本当に便利!オンラインで何でも習うことが出来ます。
私はCafeTalkというサイトで自分の興味のもった習い事をいくつかしていました。
またYouTubeだったら無料で何でも学ぶ事が出来ます。
新しい事が出来るようになることで、失くしていた自信も少しずつ回復していったような気がします。
「つながり」をつくること
- 現地の講座に参加
オンラインでもフランス語を学んでいましたが、現地で現地の先生にフランス語を教えてもらってもいました。
また、教会主催のフランス語講座に行き、素敵なフランスマダム達やフランス語を学ぶ各国の人との交流で友達が出来ました。
「承認される機会」を持つこと
- 日記で自分の成長を見える化し、自分を肯定する習慣を作る
承認される機会つくるの難しいなと思った私は、少し恥ずかしいのですが、自分で自分をよく褒めていました!!
「異国の地で家族だけで頑張って生活していて偉い!」「毎日頑張ってご飯作ってて偉い!」とか
「とにかく頑張っている!」とか(笑)
この時役に立ったのは、日記。ずっと同じような事で悩んでるなぁと思う事も沢山ありますが、やりたいことが出来るようになったり、分かるようになったりした経過を客観的に眺めることができました。
自分で自分を認めてあげるのも大切だなと感じました。

駐在妻生活は「人生最大の夏休み」かもしれない

3つの切り口とか、なんやかんやと色々書きましたが、ベースにあるのは、この期間を「楽しむ」こと。
一生懸命働いてくれている夫には申し訳ないのですが、私は駐在妻生活を「人生最大の夏休み」と捉え、
可能な限りやりたいことをやろうと決意。
一日中何もしないでボーっとしたり、旅行に行ったり、次の旅行先を調べたり、好きな映画を見たり、ゲームしたりしてダラダラし尽くすのもいいですし、お出かけに出かけるもいいと思います。
忙しい日本の日常ではできなかったことを、駐在妻生活中にやってみるのも一つの選択。
将来の為にならなくても、何かの役に立たなくても、「ただ楽しむ」時間があってもいいんです。
駐在妻というライフステージに不安を感じる方も多いと思います。
でも、「自分らしく」いられる方法を見つけることはきっとできます。
そして、大変な経験は、必ず大きな力となって自分に返ってきます!
大変な事ばかりの日々でしたし、今でもその当時生活を思い出すと泣きそうになりますが、
私にとってフランスで生活した2年間はかけがえのない思い出となりました。
沢山の家族のピンチを言葉が通じないながらも、出会ったフランスの人たちは助けてくれました。
ごはんに誘ってくれたり、相談にのってくれたり、フランス語がうまくなったことを褒めてくれたり、
言葉は大事ですが、言葉が話せなくても伝わる気持ちはあります。
居場所のなかった私たち家族に、「居場所」をくれたフランスの人たちには本当に感謝です。
自分が自分らしくいられる方法を焦らず見つけていって下さいね。応援しています。
第二弾では「イギリスの中の日本編」をお送りいたします。



