みなさん、こんにちは!いつもきらりの記事を読んでくださってありがとうございます。
ところで、4月14日は何の日かご存じですか?
正解は“National Laverbread Day(ナショナルラバーブレッドデー)” です。

Laverbread(ラバーブレッド) ってなに?
パンの種類?
とギモンに思われた方もいらっしゃることでしょう。
今回はこの謎のラバーブレッドについてご紹介したいと思います。
実は、日本人にとって欠かすことのできない“アレ”に深く関係しているんです。



“アレ”ってなに?
と気になった方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
Laverbread(ラバーブレッド)とは?


Laverbread (ラバーブレッド)とは、主にウェールズで食べられる、海苔から作られたペースト状の食べ物のことです。
見た目は桃屋の“ごはんですよ!”に代表される海苔の佃煮と似ていますが、日本の海苔の佃煮のように醤油とみりんなどで味付けされているわけではなく、ほんのり塩味が付いている程度で、ちょっと磯臭さが残ります。
そう、日本人にとって欠かすことのできない“アレ”とは、“海苔”のことでした。
筆者がラバーブレッドの存在を知ったのは、昨年、ウェールズに引っ越した友人からお土産でいただいたときでした。
「ウェールズでは海苔を食べる習慣があるんだって」とその友人が教えてくれました。
なんでも、ウェールズでは、ラバーブレッドをオーツ麦と混ぜて焼いてカリカリベーコンと一緒に食べたり、トーストしたパンに塗ったりして食べるそうです。
しかし、その食べ方に筆者はあまり心躍らなかったので、結局、チヂミに混ぜて焼き、美味しくいただきました。



ごはんに海苔、ではなく、パンに海苔…
日本人にとってはなんだか不思議な組み合わせに感じられますね。
ラバーブレッドは、昔からウェールズで食べられていた伝統的な食材、という見方もあれば、バイキングがもたらした保存食、という見方もあるようで、詳しいことはわかっていません。
少なくとも、12世紀ごろから南西ウェールズのペンブロークシャー辺りで食べられていたという記録が残っています。
ビタミンやミネラルが豊富なことから、ウェールズの炭鉱夫たちにとっての貴重な栄養源として、朝食の定番メニューとなっていました。



イングリッシュブレックファストならぬ、ウェルシュブレックファストですね!
しかし、そのラバーブレッド、黒くてドロッとした見た目のせいで“タールみたい”だなんて言われて、ウェールズの人以外からは珍味、あるいはゲテモノ扱いされているとか。
ウェールズでも、一時は海藻を食べる習慣が廃れかけていたこともあったそうですが、昨今の健康志向により、栄養価の高い海藻の価値が見直されつつあるようです。
加えて、イギリスをはじめとするヨーロッパでもSUSHI(寿司)が浸透してきたお陰で、欧米人の間でも海藻を食べるということへの抵抗が薄れてきています。
寿司の影響ということは、日本食のお陰でウェールズの伝統食が再評価されているなんて、なんだか嬉しいですね。
なんてちょっと上から目線になりかけていたら、驚きの事実が発覚しました。
海苔の養殖技術はイギリス人による発見のおかげ
イギリス人海洋学者 ドゥルー教授


なんと、海苔養殖のための技術は、ウェールズで海藻研究に取り組んでいたマンチェスター大学の海藻学者ドゥルー・ベイカー教授の発見により開発されたものなのです。
日本では、江戸時代頃から海苔の養殖がおこなわれていましたが、当時はまだ海苔の生態が解明されておらず、確立された養殖技術もなかっために収穫量は安定せず、価格も常に変動していました。
しかし1949年、日本から遠い海の向こうのウェールズで、ドゥルー教授が貝殻に付着した海苔の糸状体を発見しました。
その発見によって、謎に包まれていた海苔のライフサイクルが明らかになりました。
そしてドゥルー教授が、当時親交のあった九州大学の瀬川宗吉教授に、手紙でその知識を伝えました。
瀬川教授は、水産試験場の技術師とともにその知識をもとに研究を重ね、ついに海苔の人工養殖技術を確立していったそうです。
熊本県の神社にイギリス人の記念碑?!
1963年には、ドゥルー教授の功績を称えるため、日本有数の海苔の養殖場である有明海を望む熊本県宇土市の住吉神社に、 “Mother of the Sea(海の母)”と刻まれた記念碑が建てられました。
また、この記念碑を囲んで、毎年4月14日に“ドゥルー祭”が行われるようになりました。
そして2022年、その日を海藻への関心を高めるための記念日として“National Laverbread Day(ナショナルラバーブレッドデー)” に設定したそうです。
日本人の国民食といっても過言ではない海苔の養殖技術が、まさかのイギリスから教わった技術だったとは、九州とウェールズにそんな深いご縁があったとは、これには筆者はとても驚きました。
驚きとともに、ドゥルー教授に対し、すばらしい発見をしてくれて、その知識を日本に伝えてくれて、どうもありがとう!という感謝の気持ちを抱かずにはいられませんでした。
豆知識:住吉神社の近くにある住吉海岸公園には、大人気漫画『ワンピース』のジンベエ像が設置されています。
ウェールズ産の海苔を使ったラム酒“Barti Rum”


そして、いろいろ調べていくうちに、面白いものを発見してしまいました。
それは、ウェールズで採れた海苔をラム酒のフレーバーに用いた“Barti Rum”なるもの。



ラム酒のフレーバーに、海苔…?
“Barti Rum”は、廃れかけていたウェールズの海藻食文化を盛り上げるとともに、海の持続可能性に貢献するために立ち上がったウィリアム・ジョナサンという男性によって生み出されました。
実は、4月14日をナショナルラバーブレッドデーに制定したのも、このジョナサン氏なのです。
ジョナサン氏は、2010年にペンブロークシャーで“Cafe Môr”というキッチンカーからビジネスを始め、地元で採れた海藻を使ったメニューを提供していました。
のちに“The Pembrokeshire Beach Food Company”という会社を立ち上げ、ラバーブレッドをはじめとする、海藻を使ったさまざまな商品を開発、販売するようになりました。
なんと、2016年には大阪うめだ阪急百貨店の祭事にもThe Pembrokeshire Beach Food Campanyとして出店していたそうです。



ウェールズからうめだ阪急に来ていたなんて‼
筆者は大阪出身、阪急っ子だったのでテンション上がってしまいます!
そして2017年、第二子が生まれたことをきっかけに新たな商品を開発したいと考えたジョナサン氏は、海苔(アマノリ)を使った新たな商品、Barti Rumを生み出したのだそう。
アマノリをティーバッグのようなものに入れて、ラム酒に浸し、海苔の風味を移すのだとか。
また2022年に開催されたドゥルー祭には、上述の熊本県宇土市の住吉神社にウェールズ政府日本代表が参列し、Barti Rumを奉納したそうです。



Barti Rum、ちょっと味の想像がつきませんが気になりませんか?
飲んでみたいと思いませんか?
ONIGIRI(おにぎり)と海苔を世界に広めよう!
自称“非公式おにぎり親善大使”としての活動
筆者、実は“非公式おにぎり親善大使”を自任しており、(日本人でない)友人が家に遊びに来た際には、必ず“おにぎり”でおもてなしをする、という地味で地道な活動をしています。
こどもたちの学校のインターナショナルデーにおにぎりを作って持参したり、また、おにぎり好きになってくれた娘の友人たちに、おにぎりの作り方(お米のとぎ方、ごはんの炊き方、おにぎりの握り方)を教えたこともあります。



SUSHI(寿司)よりも、もっと身近な存在であるONIGIRI(おにぎり)を、イギリスの人に、世界の人に、広く知ってもらいたいんです!
そんな身としましては、おにぎりに欠かせない海苔についてもまた、おにぎり同様に広めていきたい、いや、いかねばならぬ!と、勝手に使命感を抱いていました。
また、ドゥルー教授に敬意を表したい、イギリスにおける海苔文化の発展に寄与したいという思いから、今回の記事を書くに至りました。
日本人によるおにぎり屋さん“SOSAKU ONIGIRI そうさくおにぎり”
ちなみに、最近、ロンドンにおにぎり屋さんが誕生しているのですが、ご存じでしたか?
西ロンドンのシェパーズ・ブッシュ・マーケットの入り口を入ってすぐのところに、“SOSAKU ONIGIRI そうさくおにぎり”という屋台があります。
大阪出身の女性が切り盛りするこちらの屋台では、うめ、昆布、高菜、など日本人にとってはおなじみの食材を使いつつも、ちょっとひねりをきかせた創作おにぎりを販売しています。
シェパーズ・ブッシュ・マーケットは、中東系のお店が集まる場所で、客層も中東系の人が多いのですが、そんな中で異彩を放つSOSAKU ONIGIRIさん。
筆者が訪れた際には、ひっきりなしにお客さんが来ていました。
地下鉄Shepherd’s Bush Market駅目の前、大型ショッピングモールWest Fieldからもすぐの場所にありますので、お買い物のついでに立ち寄ってみられてはいかがでしょうか。
まとめ


いかがでしたでしょうか。
この記事を読んでラバーブレッドの存在を知ってくださった方は、今年の4月14日、ナショナルラバーブレッドデーにはドゥルー教授に敬意を表しつつ、ラバーブレッド料理を楽しんでみませんか。
しかし、最後に残念な事実をお伝えしておかなくてはいけません。
筆者は3年以上ロンドンに住んでいますが、ロンドンにあるスーパーでをラバーブレッドを見かけたことがありません。
(ウェールズだとスーパーや街中の市場で購入できたりもするようです)
オンラインで購入することは可能ですが、旅行でウェールズを訪れた際には、ぜひ、ラバーブレッドを探してみてくださいね!
今年のバンクホリデーや夏休みに、ラバーブレッドやBarti Rumを探しにウェールズ旅、なんていうのも楽しいかもしれませんよ。
日本にお住まいの方は、ドゥルー教授の記念碑のある熊本県宇土市の住吉神社を訪ねてみられるのもいいですね。
私たちが毎日(といっても、イギリスにいては毎日食べることはありませんが…)、おにぎりやお寿司とともに海苔を食べることができているのは、ドゥルー教授のお陰なのです。
ドゥルー教授に思いを馳せながら、ありがたく海苔をいただきましょう!
Happy National Laverbread Day!!!
参考サイト
・海苔JAPAN 海苔で健康推進委員会: https://www.nori-japan.com
・ワイリーサイエンスカフェ: https://www.wiley.co.jp/blog/pse/p_22690
・フードサステナビリティ.com: https://food-sustainability.com/wales-sustainability-03
・宇土市デジタルミュージアム: https://www.city.uto.lg.jp/museum/article/view/46/282.html
・The Pembrokeshire Beach Food Company: https://beachfood.co.uk
・Laverbread Day: https://www.laverbreadday.co.uk
・BARTI: https://www.bartirum.wales/

